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「これが、ミシルレンシャ先輩?」
 翌日の昼休み、資料室で弁当を食べながら殊子は本の写真を見た。
「そ。二年F組二五番、箕知聯紗……感染者だ」
 缶コーヒーを飲みながら、向かいに座っている扇が言った。
「前も言ったけど……まだ波動は弱いけど、そのうち一気に膨れ上がる可能性が凄え高い。平気そうな面してるけど、それは彼女なりのポーカーフェイスか、もしくは」
「……『影』に気付いてない?」
 パターンは二つあった。
 一つは『影』に気付く者、もう一つは気付かない者。
 気付いていればそれは外見に現れる。しかし隠されては夢の管理人以外は解らない。気付けない者もそれと同じ。
「だから、まずその辺から……」
「御伽噺の続きでもしているの?」
 隣を向くと、そこには昨日と同じように、箕知聯紗が立っていた。昨日と変わっているのは、昨日より表情に警戒心がなくなった事だ。
「おっす。悪いな、呼び出して」
「別に差し支えはないわ。私、グループ行動は好きじゃないもの」
 そして昨日のように隣りに座ると、手に持っていた弁当箱を開こうとしてふと訊く。
「ところで持ってきてしまったのだけれど……食べても良いかしら?」
「どうぞ。俺達も食ってるし」
 言いながら扇は、箸でコロッケを二つに割って、手を止めた。正面でフルーツを食べていた殊子が、扇の目線に気が付いた。
「お前……頼むから、グリンピースはやめろって何回も言ってんじゃんよ……」
「何さ、扇ちゃんが食べられないから入れてやってるんだよー……て言うか、それ冷凍食品だからたまたま入ってただけだけど」
 扇は溜め息をつくと、見える限りのグリンピースを取り除き始めた。
「あー! グリンピース食べろっ!」
「やだよ変な味するんだもんコレ」
「猫より嫌い?」
「両方嫌い」
「良いから食え! ……あ、ごめんなさいミシル先輩」
 面白そうに笑っている聯紗に思わず殊子は言ったが、聯紗は笑いながら返した。
「いいえ、面白いものを見せて貰ってるわ。一年A組三八番、未来島殊子さん」
「え……?」
「十一月二四日生まれ、射手座のA型。一つ違いの藍是君の従妹、よね」
「は、はいっ」
「弟から聴いてるわ。一年の中でも指折りの大人気って」
 聯紗が整った顔を少し傾けて優しく笑った。大人っぽくて心地良い笑い方だったので、殊子はかあっと顔が熱くなったのを感じた。同姓の自分でもどきどきしてしまう、魅力的な笑み。写真の顔からは予想出来ない柔らかな表情の持ち主だ。きっと写真屋さんか写真写りかが悪かったんだ、うん。
 殊子はそっと扇を盗み見ると、まだグリンピースと闘っていた。
(扇ちゃん、綺麗な笑顔とグリンピース取りとどっちが大事なの馬鹿!)
 グリンピースの為に今の笑顔を見なかったなんて、大損と言う言葉では足りない、と殊子は思った。
 だって今の笑みは、もうどうしようもなくどきどきした。
 長い真っ直ぐな茶髪がぱさりと肩から落ちる所とか、唇が緩やかなラインを作る所とか、とにかくどうしようもない。魅入ってしまって、何も言えない。
 わたし、男だったら、絶対好きになってた。
 そんな奇妙な事を思いながらも、殊子は取り敢えず本題に入った。
「あの、先輩。昨日扇ちゃ……あ、いや、こいつと逢いましたよね? 変な事言いませんでした? 言ってましたよね、ごめんなさいこいつ説明が下手くそなんです」
「おい『こいつ』はないだろ、『こいつ』は。もっと良い言い方ないのか」
 やっとグリンピース取りから解放されてコロッケを口に入れてから、扇は言った。
「例えば?」
「『このお方』とか『扇様』とか『藍是様』とか『先輩』とか」
「それはわたしが言って良い言葉に入ってないもん。だから『こいつ』」
「何時も通りに呼んで構わないわよ」
 箸を持ったまま、又面白そうに聯紗は笑った。その笑みを見て、柔らかい性格だと扇は思った。顔や外見はきつそうだが内面はそうでもないらしい。思ったよりも笑顔を見せて、口調も声色も投げ遣りではなく、寧ろ相手を思い遣るかのような感じさえした。……まあ、言う時は遠慮なく言うが。
「言ったわね。確か、『変な夢の言いなりになったら、影に飲まれる』だったっけ?」
「覚えててくれたとは光栄だ」
 少し意外で、扇は戯けたように言い返した。その後殊子が、
「それは本当なんです。この世界には、『影』と呼ばれる……えーと、御伽噺のナイトメアや貘のような存在があって、何時も人を狙っています。それに飲まれると鬱病とか……精神的な病気になったりするんです」
 昨日家に帰ってから、此処までは話して良いだろうと言う事にした。しかし、自分達がそれと闘う夢の管理人と言う存在だということまでは言わないとも決めた。
「だから、夢が変だと思ったら、わたし達に知らせて下さい。知り合いにそう言うのの対処が得意な人が居ますから」
 聯紗は一瞬眉をひそめたが、やがてふっと笑った。
「そうね。……覚えておくわ。その時は弟に伝言を頼もうかしらね」
「……そう言えば、さっきも弟って言ってましたよね」
「ええ。知らないかしら? 州透しゅうすけって言うんだけど」
 姉と違って普通の名前だ、と扇は内心思った。しかし、漢字はそうでもない事をまだ知らないから思えた事である。
「D組の!? まさかとは思ってたけど……うわあ、揃って綺麗な顔」
「いや、苗字から考えてそれしかないだろ。箕知なんて苗字そう見掛けないし」
 扇がつっこんだが、殊子は無視して聯紗の顔をまじまじと見つめた。
「州透も私と同じ、個人情報を覚えるのが得意だからね。君の情報も州透から聴いてたの」
 弁当箱に蓋をしながら(小さめだったので、どうやら小食らしい)聯紗は言った。
「さっきも言ったけど、一年の中でも指折りの大人気。顔良し性格良し、のね」
「うわ、わたしそんな噂立ってるんですかっ!?」
「おい箕知サン、それ訂正してくれ。こいつ俺の嫌いなものばっか弁当に入れやがる悪魔だぞ。顔は認めるけど意地が悪いから」
 扇が殊子を指差しながら言うと、殊子はがっと牙を剥いた。
「それは扇ちゃんの好き嫌いをなくそうと思ってしてる事なの! 最高の善意なの!」
「最ッ悪の意地悪の間違いだ」
「……あの先輩、猫とか飼ってませんか?」
「猫? ええ、一匹」
「宜しければ今度貸して頂けません? いえ、こいつに見せるだけでも結構です」
「うわストップ、ストップ! ほら見ろ、充分性格悪ィだろ!?」
「良いじゃない、仲が良い証拠よ」
 けろりと聯紗が返したもんだから、扇は何だか机に突っ伏したい衝動に駆られた。そうしているうちに予鈴が鳴って、聯紗はすっと立ち上がった。
「それじゃあ、又逢いましょ。君達面白いから、一緒にいて退屈しないわ。……そういえば、二人共よく早退するらしいけど、今度良かったら、その理由、聴かせてね」
 最後に整った笑みを残して、彼女は資料室を出て行った。
「……どう思う、殊子」
 間を置いてから扇が低く問うと、殊子は冷静に返した。
「不安定すぎてる。……『影』に気付いてるかも知れないよ、先輩」
「そう……だったかな」
「扇ちゃん、解らなかった? 波動はそう弱くないよ。初めて見た時は、弱かったんだよね」
「ああ。まだ『影』が近づき初めてから一、二週間ってトコ――……」
 扇は言いながら、何気なく殊子を見る。そこには少し俯いたあどけない顔立ちの少女が、何処か不安そうに居た。
「何だろう、……わたし達は本当にこれで良いのかな」
 殆ど掠れたような声で、殊子は言った。
「『影』の対処に間に合わなかったら、その人は死んだり非行に走るんでしょ? でもわたし解らない……死ぬって何? 死ぬ時はどれ位苦しいの? どうして死ななきゃいけないの? どうして産まれてきたら、最後に死んじゃうの? ……どうしてこんなに恐い思いをして、それでもわたしは生きてるんだろう……」
 夢の管理人は、言い換えれば人の人生を左右する存在だ。『影』を退け、人間を生かす。上手くいかなければその人間は死んだり非行に走る。
「今こうして先輩の『影』を対処してる間に、他にも『影』に近寄られてる人はきっと居るんだよね。急がなきゃいけないんだよね……」
 扇は掛ける言葉もなくそれを聴いていた。そして椅子から立ち上がった。
「殊子、午後の授業サボろう。で、ゲーセンでも行って。憂さ晴らし」
「……い、いきなり何言い出すの」
「うじうじされてたら、こっちだって溜まんねえんだよ」
 すぐ後ろの本棚に本をしまいながら扇は言った。
「それに、妹放っとけないだろ……普通、さあ」
 夢の管理人達が住む世界では、苗字などない。今ある苗字は作られたものだ。扇は母が藍色の瞳をしていたから。殊子は本人には話していないが彼女の未来を願ったもの。勿論従妹と言うのも嘘だが、扇にとっては殊子は妹と言ってもおかしくはないのだ。本当の妹ではない事位解っている。それでも彼女は妹だった。まるで本当の兄妹のようにずっと一緒に育ってきたのだ。放ってはおけない。
「そうやって落ち込まれてたら、授業もまともに頭ん中入んねえっつの。今日の夕飯が不味くなるのもゴメンだからな」
「……うん。ありがと、扇兄ちゃん」
 ふわりと殊子が微笑みながら言った。


「久し振りに聴いたよなー、『兄ちゃん』とか言っちゃって」
「だって何となく言いたかったんだもん。小さい頃は何時もそう呼んでたよね」
 クレープを食べながら、殊子は照れ臭そうに笑った。
「思い返せば、わたし扇ちゃんとずっと一緒に居るね。お父さんやお母さんも、クニカ様やおばさんとずっと一緒だったって言ってた」
「切っても切れない腐れ縁、だからなあ」
「それでさ、扇ちゃんが樹登りしてたからわたしが真似して落っこちて……二人して怒られた事もあったっけ」
「そうだったか? 俺が一番記憶に残ってるのは、雷の日になったら毎回毎回泣きじゃくって『一緒に居てー』って言ってた事だけど? 一回なんて俺が寝てて気付かなくて、朝になっていきなり横で眠ってて、びっくりしたぜ……」
「え……うわ!? 何でそんなの覚えてるの!?」
「て言うか、ベッドに入るなとは言わねえけど一言言えよ。起きてビビるから」
「そんなの覚えてないでよ、恥ずかしいなもう!」
 耳まで真っ赤にして殊子が怒鳴った。彼女自身もよく覚えている証拠だ。
「今もそう変わんねえだろ。雷だけじゃないな、心霊写真とか幽霊のテレビも見られなくてさ。こっちに来たら台風も怖い怖いって、去年なんて俺の部屋に布団まで持ってきて」
「言わなくて良いよ! 仕方ないじゃない、怖いんだから……」
 殊子はクレープを口に運びながら溜め息をついた。
「……でも、きっと一番印象に残っているのはそれじゃないんだよね」
 扇は驚いて殊子を見た。長い睫が印象的な横顔は哀しみを帯びていたが、扇の視線に気付くとこちらを向いてにこりと笑った。
「わたしの怖がりも、それのせい。解ってるんだよ、自分でも」
「殊子……?」
「扇ちゃん、わたしね、夢の管理人になった事に後悔してない。あの世界に産まれなければ良かったなんて、思ってない。だから――大丈夫」
「だったら……どうしてあんな事言ったんだよ」
「わたし達だって、半分は人間だもん。歳もとるし、何時かは死ぬ。だから考えたんだ」
 嫌に喉が張り付いて、乾いたような感じがした。何か言おうとしても、自分自身が言う事を躊躇っているような。そんな気分になる。それでも扇は無理矢理言葉を発した。
「死んで欲しくないからそう思うんだろ? 俺達は夢の管理人だから人間じゃないけど……百パーセント人間じゃないって訳じゃないから……ええとだから、感情だってある」
「…………うん」
「感情って言っても沢山あるだろ? その中に、『死にたくない』って感情もあるから、不安になる。けどそれがあるから、『誰かに死んで欲しくない』って思える」
 例えば、綺麗な夕焼けを見て美しいと思う事。その一瞬は直ぐになくなってしまうけれど、ずっと見ていたいと思う事。
 流れ星を見付けた事。願い事が思い浮かばないまま通り過ぎてしまったけれど、幸せな気分になれる事。
 それ等と似たようなものだ。
「だから、そうやって思う事は間違いじゃない、悪い事じゃない。けど、閉じ込めるもんでもない。……そうじゃないの?」
「そうなの?」
「……そうだろ?」
「そう……だねえ」
 たったそれだけの短い会話。それにどれだけの思いが含まれているか、それを知る事が出来るのは今までずっと共に生きてきた二人だけ。
「不安になるんだ。……わたし達は夢の管理人。人の夢を正常に保ち、その人自身も護る存在。責任重大なんだって事解るよ。解るから……辛いよ」
 人の命を左右する。絶対に『影』を対処しなければならないと言う使命感。
「死ぬって、やっぱり良く解らない。死ぬって事に対面した事がないから、その辛さが解らない。大切な人が死なれた時の辛さも解らない。……ううん、解る筈だった。あの時のわたしは理解する事が出来なかっただけ」
 黒く丸い瞳が、少し潤んでいるような気がした。けれど扇もそうなっていたかも知れなかった。あの時理解出来なかったのは……自分も同じだったから。
「理解出来なかったのは殊子だけじゃないだろ」
「でも、わたしは全然理解してなかった」
「理解なんてしなくて良いじゃんか。理解するのは死んでからで良い」
 死ぬ事を本当に理解したら、流れに逆らう事も出来なくなってしまう。
 何も知らない子供のまま。無邪気な子供のまま。それなら流れにだって刃向かえるから。……きっと自分は、彼女に死を理解して欲しくないだけだろう。
「一度に何人もの感染者を助けるなんて出来ねえんだ。だからその時その時の感染者に専念するんだ。俺達が地球に来てるのは世界を知る為。そりゃ、感染者を助ける為もあるけど、そんなのあっちでも出来るだろ」
「でも、やっぱり助ける事に変わりは……」
「だーかーらー、親父も言っただろ?『一年間地球で遊んで、ついでに仕事もこなしてこい』って。夢の管理人としての仕事は、本来あっちでやるもんなの」
 こう言う事に限って殊子は難しく考える。それを和らげるのは、楽観的な扇の役目。
「あっちに帰る日は近いから、多分これが最後の仕事。思い切り専念しないと、地球に来た事自体が忌まわしくなるぞ」
「……うん。……そうだね」
 殊子はやっとほんの少し笑うと、ベンチから立ち上がった。




「でも箕知先輩、何か凄く複雑な悩みでもあるのかな?」
 食後のデザートのバナナタルトを切りながら、殊子が言った。
「だって、そういう特別な悩みじゃないと『影』は人の夢を支配出来ないでしょ?」
「ああ、それは俺も疑問に思ってたんだけど……」
「う〜ん、お歳頃だもんねえ。色々あるよね」
「お前はどうなんだ、お前は」
「……大変だよねえ。世話の掛かるお兄ちゃんが居ると、妹は大変なんだよねえ」
 わざとらしく嫌味たっぷりに言い返されて、扇はふて腐れたように唇を少し尖らせた。
 と、エラーのような電子音がキッチンに響いた。
「げ」
「あっ!」
 二人の発したそれは、余りに対照的すぎた。
「……来たよ。来ちまったよ」
 扇はテーブルに突っ伏して弱々しく言った。殊子はナイフを置くと、椅子から立ち上がった。それからリビングに行って、小さな箱を持ってきた。
「そんな事言ったって、わたし達は此処に居るんだもん。来るのも当たり前」
 言うとぱかりと箱の蓋を開けた。そこから光が立ち上り、一瞬ぶれたかと思ったら人の形を作った。とても小さな、透けた一人の男だ。
「お久し振りです、クニカ様!」
 殊子が開口一番そう言った。
「ああ、久しいな。調子はどうだ?」
「ばっちりですよ。何も大変な事もありませんし」
「お前は?」
 彼は扇の方を見て言った。扇は、やれやれ、と言うように肩を上下させてから、
「別に何もねえよ、親父」
 この箱は、この世界と自分達の世界を繋ぐ通信装置だ。今此処に移っているのはクニカ。自分達の世界を治める者であり、扇の父親でもある。
「このまんま何も苦労なしに終われば良いんだけど」
「何だ、何かあったのか?」
「今回の感染者が複雑な心の持ち主でさ」
 扇は頬杖をつきながら溜め息をついた。
「今回のは簡単に終わりそうにねえわ」
「ほう……症状は?」
「まだ解ってない。そんな発見して二、三日なのに……」
 聯紗は思ったよりも柔らかかった、それは良い。しかし内面が良く見えない。
 何に怯え何に戸惑い、『影』に支配されつつあるのか。
「でも大丈夫です! あと五日あるんですから、やり遂げて見せます!」
「ああ、頼むよ。扇が何時も面倒臭がりで済まないな」
 さらりと言うクニカの小さな身体を、つい扇は握りつぶしたくなる。けれど擦り抜けてしまうので更に悔しい。
「まあとにかく、大丈夫そうで安心したよ。それじゃあ、残りの日を楽しみなさい」
「はーい、ありがとうございます!」
 殊子はぴっと敬礼してみせる。
 ノイズのようにクニカの映像がぶれて、一瞬後に掻き消えた。
「あー、やっと行ってくれたぜあの親父」
 扇は又も溜め息混じりに呟くと、殊子はぺしんとその赤みがかった茶髪を叩いた。
「本っ当扇ちゃんてば素直じゃないのー。そんな事言ってるけど、実際そうも思ってないんでしょ?」
「おま……何を根拠にそんな」
「焦ってる所」
 さらりと返される。扇の言葉は見事にその一言で押し潰されて、彼自身もへこむ。
「クニカ様の何処が嫌いなの?」
「……別にそう言う訳じゃねえけどよー」
「それでも憎まれ口叩いちゃうってヤツ?」
 くくっと面白そうに笑われて、何も返せない。
「でも箕知先輩……一体何に怯えてるんだろう」
「怯える……、そうだな。箕知サンて、今の世の中に怒りを感じてるって訳じゃなさそうなんだ。不安、怯え、そんな感じだ」
「確か箕知先輩の家って、お母さんが居ないんだよね」
「……は?」
「え? 知らなかった?」
 意外そうに殊子が返す。それから彼女は、詳しく語り出した。