水遊びなんかと比べものになんないくらい、いいことなんだよ? 知ってる?








ひそやかに、睫毛にのせて








 右腕にかかる重みと、静かな寝息。もう食べられないです、という作り話みたいな寝言をさらりと言ってしまうのはなぜなのか、今でも分からない。


「……まーた食べ物の夢でも見てんのかね」


 頬にかかっている桃色の髪を左手で後ろに掻きやる。エステルは一度深く眠るとすぐには起きないので、これくらいでは目を覚まさない。そうっと頭を腕からずらしてベッドに沈めると、音を立てないようにゆっくりと覆い被さる。ベッドが微かに音を立てる。白い首筋に唇を寄せて舌を這わせると、肩が少し強張った。


「ふ……ぁ、んにゃ……」


 んにゃ、て。そんな寝言。
 起きそうにないのに唇から洩れる寝言はやけに艶っぽい。ちょっとのことでは起きないと知っているので、噛み付くように吸って跡を残す。


「んん……っは……いぅ……」


 ああ、同じ声だ。眠っていても官能的な、背筋を震わすこの声。鎖骨を指先で辿り、本人は『ない』と気にしている(自分はそうでもないと思うのだが)胸に手をやったところで。


「ん、ぁ……ゆ、ぅり……?」
「……あ、起きた?」
「や……っあ、何してるんですか!」
「知りたい?」


 瞼に口付けると彼女はすぐに口を閉ざすから、おかしくて笑う。


「いいこと、だよ」


 もう、水遊びのことじゃないって、分かってるだろ?









 ユーリはエステルを調教したりすればいいのに な…… 情事ではS属性ならいいと思います