「……ふうん。ユーリが、ね……」


 とりあえずレイヴンはそこらへんにあった縄で縛って宙に吊っておくことにした。濡れ衣だとか言っていたが、面白くないので無視した。どうせ彼の言っていることは本当で、おおかたエステルがこの質問をレイヴンにしにきただけだろうとは思ったけれど、このまま見過ごすのはつまらないし。


「……そうね。私もそのおもちゃを特定することは出来ないけれど、文句は言われないプレゼントなら検討がつくわ」
「そうなんです?」
「ええ。おもちゃにしては豪華すぎるけど、喜ぶでしょうね。保証するわ」


 ちょっと待っていて、とジュディスは部屋を出て、一分ほどで戻ってきた。その手には、どこから持ってきたのか長いリボン。


「はい、どうぞ」
「……………………ジュディス。あの、わたし、大人も楽しめるおもちゃについて質問した筈なんですけど」
「ええ。おもちゃじゃないけど、文句は言われないわよ」
「では、なく、て」


 なんだかこの流れで言うと、えーと、そう。プレゼントはわたし、みたいな感じですが。


「ジュディ。またエステルで遊んでるな」
「あ、ユーリ」


 困りつつもとりあえずリボンを受け取ってみたら、今度はユーリが部屋にやって来た。


「やだわ、人聞きの悪い。遊んでなんかいないわよ、貴方が望むプレゼントを一緒に考えていただけ」
「わたしは物じゃありません!」
「いや、でもそれはそれで楽しめると思うんだけどなあ、大人の……おもちゃじゃないけど」
「はい?」
「こっちの話だ。それよりエステル、カロルが呼んでたぞ」


 あ、はぐらかされた。思いつつもエステルはリボンをジュディスに返し、部屋を出る。宙にぶら下げられたままのレイヴンは、わざとらしくため息。


「大将、わざと嬢ちゃんに言ったんでしょ」
「……やっぱばれた?」
「ばれた、も何もないでしょうに。大人のおもちゃだなんて卑猥なこと……やだ、おっさんまで卑猥な発言しちゃった!」
「その単語で卑猥だと思うおっさんの脳は紛れもなく卑猥だぞー」


 にやにやとユーリが笑う。ジュディスはつかつかとユーリに歩み寄り、その左手首に大きなリボンを飾った。何事かとジュディスを見てみたら、彼女は赤い瞳を細め、あの不敵な笑みでこう言った。


「それで、エステルには何て答えを出すの? おもちゃの正体、具体的に言わないと拗ねちゃうわよ?」
「……そう、だなあ」


 少しからかってやろうと思って言ったことだ、答えなんて考えていなかった。本当のことを言ったら言ったで顔をケーキの上の苺みたいに真っ赤にするんだろうけど、それも可愛いだろうけど、ありきたりだし。どうしようか?


「いっそおもちゃにされたらどうかしら?」


 この女の発言がいつも以上にきわどいのは、クリスマスだからだろうか。その場に居た男二人は、そんなことを思った。




「……ねえカロル、ユーリが欲しがっている大人も楽しめるおもちゃって、どんなののことか知ってます?」
「お、おおおお大人もっ……ぶふっ!」
「きゃああ、カロルしっかりしてくださいーっ!」
「……あんた達何やってんの……?」









 そんなクリスマス。