*叙事詩ED後の捏造です。*








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てんしの、はね








「……どうしましょう……姉様」


 頬が真っ赤になっていた。それがあんまりにも可愛らしいから笑ってしまいそうだったけれど、笑ったらこの恥ずかしそうな顔が途端にむくれてしまうから堪えることにした。
 このワルキューレが妹だなんて思いもしなかったけれど、今となっては目に入れても痛くない可愛い妹だ。そういえば彼女には姉が居たらしいのだが――彼女は自分の姉になるのか、妹になるのか。


「どうするも何も……」
「だって私こんなこと初めてなんですもの」
「それは初めてでしょうけど」


 この言葉がいけなかったのだろうか。何かその『原因』を思い出したらしく、グウェンドリンの顔はたちまち更に真っ赤になってしまった。ベルベットは獣の耳を揺らし、少し困ったように視線をさ迷わせた。
 コルネリウスと共にコイン探しの旅を始めてから数ヶ月が経っていた。時々グウェンドリンとオズワルドの元を訪ね、そこを拠点にしコインを探していたのだが、ある日グウェンドリンがベルベットを呼んだのだ。それは、とても大事な相談だった。


「こんなの、私思ってもみなかったんです。ワルキューレは戦場で散ってこそ、その命を輝かせるもので……誰かのもとに嫁ぐことはこれ以上ない屈辱と信じていたから」
「だけど今は違うのでしょう」
「……失いたくないという思いが出てしまったんです。最初は屈辱でしかなかったのに、今ではあの人のものになっている自分の立場を護りたいとさえ思うくらいになってしまったの」


 思いもしなかった。
 思いもしなかったのだ。
 嫁ぎ、身の自由を奪われ、心を束縛され、翼はおろか小さな羽根一本を動かすことすら許されない暮らしをすることになるのだ。……そう思っていたのに、現実は違った。
 こんなにも心は穏やかで、私の翼は何時でも風を掴める。


「姉様は辛くはなかったのですか。コルネリウス様とのことを咎められたりしたのでしょう」
「ええ。けれど……コルネリウス様のほうがもっと辛かったでしょうね。私は亡国の姫だけれど、あの方は健在するタイタニアの王になられる存在だったから」
「でもオズワルド様もタイタニア王家の血筋を引くと最近知って驚きました」
「……そういえばオズワルド、前に言ってたわ。『兄上』と呼ぶのをやめさせろ、と」
「……………………」


 まあ、そういう性格だし。


「きっと世界樹に祝福されるわ。私も早く見たいわ、だって私の甥か姪ということでもあるんだもの」


 その清らかな身体の中に宿る命は、一体どれほど可愛らしいだろう。





多分コルネリウスよりオズワルドの方が年上、っていう設定。
なんかもう趣味丸出し。