その間の淡い色








「ご覧下さい、オズワルド様」


 涼しい風が吹く午後だった。テラスに居た彼女が自分を呼んだので何かと思ったら、彼女の手の中には小さな赤い小鳥が住んでいた。


「テラスに腰掛けていたのです。手を差し伸べたら怖がりもせず、ほら」
「……へえ。人に慣れているのかな」
「そうかも知れませんね。森からやって来たのでしょうか」


 オズワルドが手を差し伸べると、矢張り小鳥は怯えもせずにこちらに移ってきた。かと思ったら高く細かく鳴いて、飛んだ。自分の回りを旋回してから、肩に止まった。


「……………………」


 複雑な気分だ。これは好かれている、ということなのだろうか。グウェンドリンがそれを見て呆然としてから、くすくすと目を細め笑った。


「オズワルド様、懐かれたようですね」
「そんなこと言われても……」
「でもこの鳥、何だかオズワルド様に似ています」


 似ている?


「……何処が似ているんだ」
「赤いところとか……」
「……他には?」
「……いえ……何となく、似ているなって、思ったので」


 つまり根拠はないのだ。彼女らしいと言えば彼女らしいけれど。
 何だか直ぐには何処にも行かなそうな気配だったので、小さな器に水を汲んでやって、鳥の餌はないから代わりにキャベツを一枚テラスに置いた。


「きっと、綺麗だから似ていると思ったんです。羽がとても綺麗で、オズワルド様の髪みたいって」
「俺の髪? ……綺麗か?」
「ええ。それに、目の色も同じですから」


 対照的な青い瞳が微笑む。
 全く正反対の、色。
 それでも解け合えるから、良い。


 やがて、赤い小鳥は空へ羽ばたいていった。ふわり、赤い羽根が一枚床に落ちる。それを指先で拾い上げたグウェンドリンは、微笑んでその羽根を唇に寄せた。


『何だかオズワルド様に似ています』


 その言葉を思い出し、まるで自分が口付けられているような気がした。そして思い出す。


「……羽根」
「?」
「君が落とした羽根を手にした時があったんだ。君と戦場で逢うよりも前に」
「……私、オズワルド様とお逢いしていたのですか?」
「いや、そうじゃない。偶然拾っただけなんだ」


 けれどその羽根は神聖な存在だったから、口付けるなんて愚かなことは出来なくて。けれど今ではこの少女を腕の中におさめることだって出来る。その、何と幸福なことか。


 そのうち、紫の小鳥とか来たら笑ってやろう。


 ああ、赤と青が解け合って生まれたんだな、と。





オズ様、軽く変態。